
限られた自己資金だけで不動産投資を行う場合には、得られる収益も限られます。
しかし、金融機関から融資を受けて投資をすれば、より大きな収益を得ることも可能です。
もっとも、融資を受けて不動産投資をすることにはリスクもあります。
そのためしっかりとした収益率の見込みの下で投資を進めなければなりません。
そこで、ここでは借入金を利用して不動産投資をする場合に押さえておくべき「レバレッジ」と「ROI」という2つのキーワードについて紹介します。
目次
不動産投資におけるレバレッジとは
そもそもレバレッジの意味は?
レバレッジとは英語で「てこ」を意味します。
てこは小さな力で重い物を持ち上げられるため、小さな力で大きな効果を生むことを指して「レバレッジ効果」や「レバレッジを効かせる」などと言います。
レバレッジの効力とは?
これを不動産投資に当てはめると、「借入金を利用することで、自己資金よりも大きな資金を利用し投資効果を高めること」を意味します。
不動産投資家の多くは、自己資金だけでなく金融機関の融資を受けて物件を購入しています。
それはこのレバレッジを効かせることを意識しているからです。レバレッジとは、資金を大きくして収益を最大化させる手法なのです。
不動産投資でレバレッジを効かせて効率を高める
レバレッジを効かせた効率的な不動産投資
レバレッジを効かせた不動産投資をわかりやすく説明するために、具体例として1000万円の自己資金を不動産投資にあてる場合を考えます。
■レバレッジの比較
――レバレッジ無しの場合――
その場合、価格1000万円、年間家賃収入100万円の物件をすべて自己資金で購入すると、表面利回りは10パーセントになります。
価格 1,000 万円÷家賃 100 万円 = 利回り10%・・・A |
――レバレッジ有りの場合――
一方、1000万円の自己資金を頭金として融資を受け、価格3000万円、年間家賃収入300万円の物件を購入した場合はどうでしょう。
価格 3,000 万円÷家賃 300 万円 = 利回り10%・・・B |
表面利回りは先ほどと同じ10パーセントです。しかし、家賃収入は3倍の300万円にもなっています。
このように、融資を利用して自己資金だけではできない大きな投資を行うことを「レバレッジを効かせる」と言うのです。
■大きなレバレッジを使用した場合
上の例では融資によって自己資金の3倍の投資を行っていますが、例えば同じ自己資金でも9000万円の融資を得て1億円の物件を購入することができれば、10倍の投資を行うことになります。
価格 1億円 ÷ 家賃 1000万円 = 利回り10% |
同じ自己資金であれば、大きく借り入れができるほどレバレッジ効果は高く、投資効果が上がるということです。
ただし、単純に大きな融資を受ければレバレッジが効くとも限りません。
それぞれの物件に合わせて、投資効率を適切に判断する必要があります。
どれだけレバレッジが効いているのかはROIで見る
投資判断を行うものとして、ROIがあります。ROIとは「Return on Investment」の略で、投資利益率のことです。不動産投資に当てはめると、物件購入の際に使った自己資金を年間何パーセント回収できるかを示す指標になります。
ROIの2つ特徴
ROIの計算式は「(家賃収入-(ローン返済額+経費))÷頭金×100」です。
このROIの特徴は2つあります。
❶家賃収入からローン返済額と経費を差し引いた額が基準になっている点です。
つまり、実際のキャッシュフローを基本にした指標だということになります。
❷物件価格ではなく自己資金を基準にしている点です。
これらによってROIでは不動産投資で得られるキャッシュフローによって自己資金がどれくらい回収できるのかを判断できるようになっています。
言い換えれば、ROIの数値が大きいほど少ない投下資本で多くのキャッシュフローを得られ、投資効率が良いということです。
■ROIを計算する
――全額自己資金で購入した場合――
例えば価格3,000万円、年間家賃収入300万円、年間経費20万円の物件について考えてみます。まず、この物件をすべて自己資金で購入した場合のROIは次のようになります。
300万円-(0万円+20万円))÷3,000万円×100=9.3% |
――頭金1,000万円の場合――
一方、この物件を頭金1,000万円、借入金2,000万円、年間返済額114万円(返済期間25年、金利3パーセント、元利均等払)で購入した場合のROIは以下の通りです。
(300万円-(114万円+20万円))÷1,000万円×100=16.6% |
――頭金500万円の場合――
さらにより多くの融資を受けられた場合、例えば頭金500万円、借入金2,500万円、年間返済額142万円(返済期間25年、金利3パーセント、元利均等払)で購入したときには下のようにROIはもっと高くなります。
(300万円-(142万円+20万円))÷500万円×100=27.6% |
Check
このように、多くの融資を受けることができれば頭金は少なく済むため、ROIは上昇し投資効率が高いということです。つまり、レバレッジが効いているということになります。
こうして実際のキャッシュフローと頭金を基準とするROIは、少ない頭金でどれだけ収益を上げることができるのかを判断する投資基準です。
ROIの高いレバレッジを効かせた投資は、高い収益をもたらしてくれます。
レバレッジを活用する際にはリスクへの理解も必要
ROIは不動産投資を行う上での有効な指標ですが、弱点もあります。それはこの指標によっては、ある時点しかとらえることができないという点です。
つまりROIでは、経年による家賃収入の増減やローン金利変動などのキャッシュフローの変化は考慮されないのです。
ROIのリスク❶(経年劣化)
不動産投資において注意しておくべき大きなリスクの1つは、家賃収入の減少です。一般には、物件の経年劣化によって設定できる賃料は安くなり、家賃収入は減少していきます。
実質的に賃料は、老朽化に伴い年0.5~2%程度下落しますが、立地条件によってこの下落幅を最小限に抑えることができます。関連記事:不動産投資の絶対条件!空室を改善する11の条件と満室経営5つのルール
また、近隣に競合するような新築物件が建築された場合にも家賃収入の減少は免れません。
※アットホームデータよりグラフ化
上記の図は経年劣化による実質賃料の下落を表した図になります。
新築時の賃料を100としてそこからの値下がりを表しています。
注目すべき点は、新築から、最初の2年の更新で一度、賃料は上昇する傾向にあり、その後、急激に値下がります。その値下がりは、築20年前後で収まっていきます。
ほかにも、その地域における賃貸需要が大幅に減る可能性もあります。このような収入源のリスクはROIには反映されていません。
ROIのリスク❷(金利の変動)
もう1つのリスクは、ローン金利の変動です。不動産投資の多くは変動金利によるものですが、この金利が上昇すればローン返済額も増加します。
この金利の変動もROIには反映されません。これら2つのリスクは、いずれもROIが基準とするキャッシュフローを大きく減らしてしまう可能性のあるものです。
※住宅金融支援機構
上記の図のように金利は、下がり続けています。
近年ではマイナス金利政策の影響で、歴史的な低金利時代ですが、いつマイナス金利政策が解除されるのかは誰にもわかりません。
そんな中、金利が上昇した場合、キャッシュフローが減少すればROIも低下するのは当然です。ROIは時間の経過によって生じるこれらのリスク要因を織り込む指標ではないため、ROIだけを見ているとリスク管理が不十分になってしまいます。
そのため、ROIはある時点での投資効率を表す指標に過ぎないということを冷静に理解しておきましょう。ROIが高くレバレッジが効いているほど良いのは確かですが、そこに隠されたリスクもしっかりと把握しておくことが必要なのです。
レバレッジこそが不動産投資の醍醐味
レバレッジは融資を受けて大きな投資を行い、収益の最大化を狙う手法です。そして、投資判断の指標であるROIが高ければ高いほど、レバレッジが強く効いていることを確かめられます。
不動産投資では、不動産が担保とされるため金融機関からの融資を得やすく、レバレッジを効かせやすい特徴があります。この特徴を活かし、レバレッジを強く効かせることこそが不動産投資の醍醐味だと言えるでしょう。
まとめ
1.レバレッジを掛けることで利益の最大化を行う
2.ROIを考慮し、自己資金と借入金のバランスをはかる
3.ROIは経年劣化のリスクと金利上昇リスクを考慮していない
4.ROIだけに目を向けるとリスクを回避できない

遠藤 裕史

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